読書『江戸の旅行の裏事情 大名・将軍・庶民それぞれのお楽しみ』感想

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旧街道歩きを始めてみて、あらためて江戸時代の歩き旅ってどんな感じだったのかなぁと、歴史にむくむくと興味が湧いてきました。
何かいい本ないかなぁ〜とAmazonで検索して、この本がヒット。
で、図書館で借りてきました。
ざっくりとした歴史の知識しかない私には、とても新鮮でした。
旧街道歩きの楽しみは、古い建造物を愛でながら脳内タイムスリップすることだったりします。
好き勝手に想像するのも楽しいですが、知識があった方がリアリティが増してくるというもの。
読んでみて良かったのでレビューします。
目次

目次(内容)

第一章:庶民の旅の表と裏

・物見遊山を楽しめるようになった庶民の実情とその背景
・参詣者を増やしたい全国各地の神社、温泉、宿泊業者の積極的な営業戦略
・人気の高い熱海に対抗する箱根七湯のある戦略が旅行市場の拡大を牽引
・男たちにとって本当の目的ともなっていた「精進落とし」

第二章:買い物、芝居 ー したたかな女性の旅

・自由を得た江戸時代の女性たちが旅行の楽しさを享受していた姿
・女性の旅先の買い物などの消費行動が、旅行市場の拡大に大きく貢献したことは現代と同じ
・厳格な取り調べが行われていたはずの関所は、袖の下次第でゆるゆる

第三章:大江戸、人気観光地となる

・江戸が旅行先として人気が高まった理由
・江戸は娯楽が溢れる町であったことに加え「出開帳でがいちょう」というイベントが果たした役割

第四章:大名の「団体旅行」は七難八苦

・大名に義務付けられた参勤交代
・数百人から数千人レベルの団体旅行ゆえに「ダイヤグラム」まで用意したが、道中はトラブルの連続だった

第五章:乱暴極まりない武士・公家の旅

・将軍や天皇の権威を傘に着た出張旅行で武士や公家が大手を振って甘い汁を吸っていた実態
・難癖をつけて駕籠かき人足などから金銭を巻き上げるのは当たり前のようになっていた

第六章:自粛を求められた将軍の旅

・社会に与える影響があまりに大きいため行動の自由が制限された将軍の「旅行」
・将軍は江戸の大名庭園内で擬似旅行を楽しむ
・中にはテーマパークのように宿場をそっくり復元させた庭園まであった

第七章:外交使節、江戸へ行く

・鎖国下に来日した外交使節の江戸までの旅
・失態があれば外交問題となるため、接待にあたった諸大名は最新の注意を払う。
・「おもてなし」で一番苦労したこととは

読んだ感想

まず驚いたのは、江戸時代に旅行ガイドブックがあったということ。
今のような印刷技術が発達していない時代、すごく貴重な物だったのだと想像します。
浮世絵はずっと見ていたくなる魅力があるなぁとは思っていたけれど、江戸時代ではプロモーションの役割を果たしていたと知ると、なるほど、と思います。
ずっと見ていたら、そりゃ実際に見てみたいと思うだろうし、当然行ってみたくなるだろうなぁと。
写真よりも絵の方が、想像力が掻き立てられるのかも。
そして、大名に参勤交代があるのは知っていたけれど、日数も人数も想像以上で驚きました。
権力をかざしたトラブルがあったのは、こちらは「やっぱりね」と特に驚くこともなく。
テレビの時代劇を見ていると、庶民が大名行列にひれ伏していて、大名は優越感だったのかしら、とか子供の頃は思っていたけれど、この本を読む限りでは大名は大名で大変そう。
質の良い食べ物、お部屋、お布団を堪能できるお金はあっても、行動は制限されていてなんだか不自由。
庶民のような気楽な旅はできなかったそうなので、なんだか気の毒です。
以前訪れた新宿御苑はすごく広くて美しくて、大名の財力すごいなー羨ましいなーと思ったものだけど、庶民ほど自由に旅行できない故の仮想旅行空間だったと知るとやるせない。
時の将軍も一般人と同じように旅行を楽しめたのは、この仮想旅行だけだっただなんてちょっと気の毒になってしまう。
本物の旅行の方が刺激的で絶対に楽しいから、旅行においては庶民の方が楽しさを謳歌できていたのかもしれません。
そして都内には、どうしてこんなにも神社仏閣が多いのかと思ってました。
自分が無宗教のせいか、どうも謎でした。
宗教信仰はもちろんあったのだろうけど、どうも人を呼び込むプロモーション的役割もあったっぽい印象。
「出開帳(でがいちょう)」という、出張イベントがまさにそう。
本来の意味からズレていってお祭り化してしまうあたりは、西洋のハロウィンが日本で仮装イベント祭りに変化してしまったことを彷彿とさせるのでした。
日本人は今も昔も気質は大して変わってなさそうで、興味深かったです。

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